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第九話

※注釈
軍事政権に賛成する意図はないです。
ただ万が一戦争をするなら最高責任者が最前線に出ろよとは思います。

——————


 子どもながらに、そんな大人たちの影を汚いと思っていた。
「まさか宗家嫡男の××様があのようなことになろうとは……」
「そうすると後継は次男の雅様か?」
「おお! これはこれは雅様!」
「ご機嫌麗しゅう!」
「お前たち、雅様がいらしたぞ!」

 子どもながらに、気を使われることが心地悪かった。
「みやびさま、何して遊びますか?」
「きしだんごっこにいたしますか?」
「みやびさまがだんちょうやくですね!」

 だから、初めてだった。
 広場で一人本を読んでいた其奴が鼻で笑う。
「昨日仲間はずれにしていたくせに、よくやるね。
 しかめっ面でつまらないって言っていただろ。
 まあ、そいつほんとに愛想ないけど」 
 “ご学友”たちが律儀に思ってもいない反論をする。
「お前誰だ!」
「雅様になんと無礼な!」
 其奴は、アーモンドは言った。
「ハッ。礼儀とか、孤児(みなしご)だからよくわかんないなあ」


 □■□


 午前の光が射し込む自室で、雅は前腕に小手をパチンとつけた。
 柔く光る黄色の小手は、やや古びているものの、壊れる気配は全くない。
 彼がそれを見やると、脳裏にアーモンドの声が蘇った。

「雅、これもらってよ。
 この前、陣の選択授業を受けたから作ってみたんだ。
 光量が出過ぎて大変って言ってたでしょ?
 最大値は下げないよう、コントロール補助の陣を組んだんだ。
 ま、すぐ壊れるだろうけど。そこまで使ってみてよ」

 雅はアーモンドに、今日の招集を話していなかった。


 □■□


 その場所へ向かう者以外は通らない、石畳の道。
 僕は折れた腕を吊るしながら歩いていた。
 痛み止めの陣も効いているし、利き腕でなかったのは幸いだ。
 別の小道から見慣れた姿が現れる。
「あ、雅くん」
 今日は正装、騎士科における戦装束で向かう必要があった。
 なので僕はオレンジのジャケット、雅くんもいつもの赤い服だ。
「体調はどうだ」
「傷はもうすっかり。腕も真っ二つに折れてたから、まあまあ治りは早いだろうって」
「そうか。行くぞ」
「うん」
 僕たちは、デライトリの森で起こったことについて、緘口令を敷かれた。
 一応アカデミーは騎士団——国防軍に属する機関なので、その命令は絶対。
 破れば、本人と聞かされた人の極刑が待っている。
 そして僕と雅くんは緘口令と共に、今日の極秘招集をかけられていた。
 招集先は王族が住まう城。
 僕たちは、あの日以来ユマくんに会っていなかった。


 招かれることなんて、普通は一生に一度すらない。
 僕は緊張でガッチガチだった。ボディチェックの門番さんに宥められ、雅くんには白い目を向けられた。
 そんな恥ずかしい事態を乗り越え、いよいよ王家の城へ通された。
 僕たちは案内役の方についていく。
 お城は頑丈な石造りだけれど、高い天井と、壁面が薄いクリーム色に塗られているおかげで圧迫感はない。壁のレリーフも豪華なものをメインに一つ据え置き、落ち着いたデザインの装飾を周りに合わせていた。財力を示すため贅の限りをつくす、というより物を大事にしている印象だった。
 しばらくそんな回廊を進むと、いっとう背の高い扉の前で案内の方が立ち止まる。そして僕らへここで待つよう指示し、先に扉の奥へ消えた。
 僕は少しだけ辺りを見回した。
 なぜかここにはいないけれど、道中ではあちらこちらに護衛の騎士団がいた。パレットと防具を手に持ち場を守っている、僕たちの先輩にあたる方々だ。肩にラインの入った紋章をそれぞれつけていて、緑のラインの人もいた。緑は比較的若い年次。つまり数年後の僕らの姿ということになるけれど。
(あんな眼光鋭くてムキムキになっている自信ないよ……)
 なぜか雅くんに膝蹴りされた。
「え!? ごめん!?」
「あ、すまぬ。何故か腹が立って……」
「えええ……」
 ちょうどその時、案内の方が出てきた。
 そして通されると、待たされた理由もわかった。
 扉は二重になっていたからだった。前室のような場所は窓がなく、少し暗く感じる。奥の扉の脇には、最後の砦にふさわしい、より屈強な団員が待機していた。
 けれどその団員は僕らと入れ違いに、最初の扉を出て行った。案内係りも。なんだか睨まれたというか、怪訝な眼差しを向けられた気がする。
 僕が状況を飲み込めずキョロキョロしていると、雅くんが小さく呟いた。
「人払いだ」
 その時奥の扉が開く。側には誰もいなかったので、そういう陣が施されているようだ。内側から国王陛下の声がした。
「待たせたな。入ってくれ」
 雅くんと一緒に、敬礼をしてから入室した。
 前室がほの暗かったせいか、降り注ぐ陽光が眩しい。
 ダンスパーティーができそうなくらい広い部屋で、壁一面に並ぶ大きな窓から、青空と森の緑が見えた。ただ、ガラスには結界の陣が薄っすらと浮かんでいる。風景を邪魔しないように配置されているけれど、確かあの陣は尋常じゃない強さのものだ。
 真っ赤な絨毯が道のように中央に敷かれ、奥の玉座まで伸びていた。素人目に見ても上等なことがわかり、踏むのが憚られる。いやもう踏んでしまっているけれど。
 どこまで歩み進んで良いかわからなかったので、雅くんに合わせて止まった。多分絨毯の全長3/4くらい。
 そこでようやく陛下のお顔が見えた。
 王座は数段高い場所にあり、その階段にちょこんと、懐かしい水色が座っていた。
「ユマくん!」
 ホッとしてつい声をあげてしまった僕の肩を、雅くんが小突く。
「王族の前だぞ」
「あ」
 そして彼は片膝を地につけ頭を下げた。
 僕も慌てて彼に倣う。そういった所作はアカデミーで教わったけれど、まともにやるのは初めてでぎこちない。
 国王陛下は、そんな僕らを見て朗らかに、大らかに笑った。
「わざわざ呼び出して悪いな!
 忽那御堂楼の。大きくなったなあ、いつ以来だ? そう固くならずに良い」
「勿体無いお言葉」
 クシナミドウロウは雅くんの苗字だ。
 貴族や身分の高い人は、字画が多い漢字や、長いミドルネームを持っている。
 一方で、僕のように村出身の者や、大半の国民は苗字を持たない。
「透明の君は、会うのは初めてだな」
「は、はい」
「二人とも顔を上げてくれ。大切な話をしたい」
 僕らは膝をついたまま見上げる。
 陛下が続けた。
「知っての通り、彼女は俺の実の娘。この国唯一無二の姫だ。
 だがボーイズの知る姫とは違うだろう。ユマという名も、後ろのミドルネームから取った。
 まずはそのわけを、緘口令を敷いた理由を話させてくれ」
 僕は、ユマくんが膝の上で拳を強く握っていることに気がついた。
 陛下の話は続いている。
「王族は6歳からパレードに出たり、国民の目に入るようになる。
 その少し前。
 人魚の国との国交があって、ユマも連れて行った。
 そこで——「パパ、私から話す」
 ユマくんが立ち上がると同時に遮った。そしてコツコツと階段を降りる。
「私は入ってはいけない領域に迷い込んでしまった。
 小さい頃だから全然記憶はないけど、そこで呪いを受けた」
 彼女は僕たちの前まで来ると、フードを降ろして手袋も外した。
 腰まで届く水色の髪がさらりと流れ出る。
 改めて明るい場所で会うと、背丈より幼い印象の顔だちだった。大きな瞳が長いまつ毛に縁取られている。
 そしてユマくんは、手のひらを僕らへ向けて言った。
「色彩を奪われる呪い」
 指が、先端にかけて透明になっていた。第一関節まで消えかかっている。
 試験の時は気づかなかったけれど、よく見れば髪の毛先も透明になっていた。
 僕たちが愕然としている間に、ユマくんはフードと手袋つけ直した。
「時々療養室の花たちから色を貰って、呪いの進行を遅くしている。
 マックスと初めて会ったのもその時だな」
 彼女はこっちを見て口角を上げたけれど、僕は嫌な汗をかいていた。
「“遅らせる”……? まさか、解呪の方法は……」
 ユマくんは首を横に振った。
「時間稼ぎがどのくらいできるかわからない。
 けど——やがて全身が透明になった時、泡になって消える」
「そんな……! どうして迷い込んだだけで……!」
 僕はつい声を荒げ、ユマくんを驚かせてしまった。
 けれど彼女は、今度こそいつものように笑って言った。
「悪いのは私だ。
 でも、向こうも呪うつもりなかったみたい。
 進行を遅める方法を教えてくれたのも人魚の国だ。
 戦争になってもおかしくなかったのに……この程度で済んで、本当によかった」
 自分が消えてしまうことを“この程度”と言う、言わざるを得ないユマくんに、僕も雅くんも言葉が出なかった。
 その空気の中、陛下の歯をくいしばるような、低い声がポツリと落とされる。
「俺は娘を愛している。
 いつか泡のように消えるなんて冗談じゃねえ」
 ユマくんが陛下を振り返った。
 僕らから彼女の顔は見えないけれど、陛下はハッとして後頭部をガシガシかいた。
「だが国民の前で消えてしまった日には、人魚の国との国交がどうなるかわかりゃしない。
 泡は、人魚の呪い特有のものだ。
 あちらが唯一のパレット生産国とはいえ、国民の反感は免れない。
 そして揉めたら最後、ただでさえ冷戦の隣国も隙を突こうと押し寄せてくる。
 だから影武者を立てた」
 ユマくんが元気よくこちらを向き、いたずらっぽくニカッと笑った。
「けど、そのまま大人しく待ってるなんてロックじゃあない!
 そもそもはオイラ自身のことだ。オイラが出来ることを探すのが筋だろ?
 だから大きくなって話を聞いた後、急いで一般教養とかを終わらせて、騎士科に入った。
 探索任務ってことにすれば、いろんな場所に行ける。呪いを解く方法があるかもしれない」
 そこまで高らかに語ったユマくんは、急に頭を抱えてしゃがみこんだ。目線が僕らと同じくらいになる。
「あ〜……そのぉ〜……。
 試験で無茶をした自覚はある。本当にごめん。焦っていた。
 ……自分で自分を守る力が、ほしくて」
 焦りもするだろう。むしろ落ち着いている方だとすら思う。
 ばつが悪そうにもごもごしている姿は、見知った友達の姿で。そして僕はたった今、その友達がとんでもない事態に陥っていると聞いた。
 だから、王族の前だというのに、言葉が勝手に僕の口をついていた。
「僕に……僕らに、何ができる?」
 ユマくんは口を開けて僕を見る。
 なんだか、末の弟のわがままを聞いてあげた時を思い出した。
 ユマくんは忙しなく立ち上がった。
「オイラはこれからも騎士科に通うし、普通に授業も任務も受ける!
 協力を仰ぐ時もあるが、自分の身は自分で守る! 今だと全然説得力ないけど!
 だから、その……えーと王族扱いしないでくれ! 特にお前!」
 ユマくんはビシッ、と効果音がつきそうな勢いで雅くんを指差した。
 そういえばさっきから彼が全く喋らない。
「……み、雅くん?」
 僕からは横顔しか見えないけれど、無表情で、知らない人のようだった。
 彼は再度頭を下げて言った。
「承知致しました」
 僕とユマくんはポカンとして、互いを見合わせてしまった。
 隣にいるのに、思わずコソコソした声になってしまう。
「ど、どうしたの雅くん」
「けじめだ」
(たしかに、喧嘩してばっかりだったけど……!)
 すごい変わり様だ。
 遅れてユマくんも我に返る。
「ふ、ふふーんだ! ようやく身の程がわかったか駄犬め!」
(ユマくんなんでそんなに煽るの!? あっ動揺してる!)
 ベロベロバー! とユマくんが一国の姫にあるまじき顔をした。顔の下半分しか見えてないけど、ちょっと、うん。
 雅くんは表情を変えないまま、そんなもの見えていないかのように、すらすらと言った。
「姫。数々の非礼、申し訳ありませんでした。如何なる処罰もお受け致します。
 しかし他の者に悟られぬよう、人目がある場所では今まで通りに振る舞いますので、ご容赦ください。
 当然万一の際は、この命に替えてもお守り致します」
 いつもの雅くんなら青筋立てて言い返していたのに、恭しく——余所余所しく頭を下げていた。
 ユマくんの手がだらりと落ちる。そしてローブを皺になるくらいに握った。
「……いやだ」
 小さな彼女の声に、雅くんがようやく顔を上げた。不思議そうに首を傾げる。
「姫?」
「呼ぶな!」
 ユマちゃんが泣きそうに、悔しそうに叫んだ。
「立場がわかった途端それか! いつもあんなに怒るくせに!
 やだやだ! イラっとしただろ! なんで命にかえるとか言うんだよ!」
 ついにユマくんの頬を綺麗な涙が一筋伝う。
「なんで、なんで言い返さないの……」
 すん、と小さく鼻をすする音が聞こえた。
 後ろで見守っていた陛下が、宥めるように優しく声をかける。
「ユマ、忽那御堂楼の一族は——」
「わかってるよ! 大恩があるからって昔から王族に忠誠を誓ってくれてる!
 どんな命令でも必ず遂げるし、戦争があった時代には平気で盾になってたレベルだ!」
 僕はそれを聞いてぎくりとした。
 雅くんなら、やりかねない。
 彼のお家がどういう教育をしているかわからないけれど、今さっきの無機質にすら見える変わりようには嫌な予感しかしない。
 ユマくんの叫びが部屋に響く。
「けどそれじゃあ……お前の意思はどうなるんだよ!」
 反響した声はただ虚しく消えていった。
 僕は雅くんをちらりと窺う。
 機械のように無表情だった彼は、目を丸くしていた。
 その瞳から体温が戻ろうと、人間に戻ろうとしているように見えた。
 雅くんが何かを言おうと口を開く。けれど声が出なくなったかのように諦め、それを何度も繰り返し、最終的に俯いた。
 そして、すぐ隣の僕にかろうじて聞こえるほどの、小さな小さな声を絞り出した。
「…………くそっ」
 その拳は硬く握り締められている。
 なんだか、雅くんも呪われているように見えた。
(僕に、何ができる)

 ——だから、その……えーと王族扱いしないでくれ! 特にお前!
 ——しかし他の者に悟られぬよう、人目がある場所では今まで通りに振る舞いますので、ご容赦ください。
 ——どんな命令でも必ず遂げるし、戦争があった時代には平気で盾になってたレベルだ!

 脳内でぶつかった言葉たちが閃光を放ったようだった。
 僕は大きな声を出しながら、雅くんの腕を取って立たせた。
「あーっと!!」
 全員からの、何やってんだこいつ、という視線がとても痛い。でも正気になったら負けだ。
 僕は勢いのままに早口で言い切った。
「雅くん、命令だから!
 だってほら、王族扱いするなってユマくん言ってたよ! ね!
 バレちゃいけないんだからいつも通りにしないと!
 “命令”でしょ!?」
 しばらくポカンとしていたユマくんだけど、僕の意図を汲み取ってくれたらしい。言葉足らずだったのに本当にすごい。
 彼女は「それだー!」と言わんばかりに、フードから下の顔を輝かせた。
「えっと……!
 雅! オイラが王族だと知らなかった頃のように、“思ったように”振る舞え! これは命令だ!
 …………き、聞いてるか?」
 ユマくんが不安そうに尋ねるほど、雅くんは呆気に取られていた。
 そしてようやく我に返ると、僕と反対側の手で顔を覆う。
 表情はわからないけれど、口端が上がっているように見えた。
 雅くんからぽそりと言葉が漏れる。
「……俺様は、救われてばかりだな」
 手を降ろした彼は、僕らの知る雅くんだった。
 プライドの高い、強い眼差し。
 そして雅くんはいつもより少しだけ柔らかく笑って言った。
「いいだろう。……ユマ」
「ふん! もちろん君もだ、マックス!」
「う、うんっ!」
 成り行きを見守っていた国王が、お腹を抱えて大笑いした。
「お前たち、ロックだなあ!」


 僕ら三人、ユマくんもこのままアカデミーへ戻ることになった。
 試験の時のような陣で訓練の森まで飛ばしてもらえるらしい。
 陛下は陣へ入った僕らに言った。
「ユマから騎士科に入るって最初に聞いた時は、ひっくり返っちまったぜ。
 だが、その判断は正しかった。
 こんなにナイスな仲間に出会えた」
 陛下は続けた。
「ボロボロになったり、指導官を振り切ってまで、助けてくれた事。
 心から感謝する。
 形式上は護衛命令になっちまってロックじゃないんだが、ユマと仲間でいてやってくれ。
 事情を知る、そして支え合える仲間が必要だ」
「はい!」
「承知致しました」
 陣が光る。もうすぐ転送されるようだ。
 ユマくんが陛下に手を振った。
「じゃあね、パパ! 心配だからってペリーさんを使いっ走りにするなよ!」
「うぐっ!」
 そんな陛下の姿を最後に、目の前は森の緑に切り替わっていた。敷地が広いから鉢合わせることはほぼないけど、お昼時だからか、いつも以上に人の気配がない。
「……さて」
 おもむろに雅くんが腕組みをし、ユマちゃんを見下ろして言った。
「誰が駄犬だと? このじゃじゃ馬が。
 それに先程の見るに堪えない無様なツラはなんだ? 人を馬鹿にしようとして失敗したのか自らを愚かだと自己申告しているのかはっきりしろ。だいたい貴様は——」
「この流れで!? そ、そんな言わなくたっていいだろ……!」
 いつもより三割増しの雅くんに、ユマくんが涙目のような悲鳴をあげる。
 ちゃんと頭にきてたんだね。


 □■□


 三人を見送った後、国王は誰もいない空間へ言った。
「悪かった。機密命令なんざ出して」
 虚空に青い陣が浮かび、そこから黒ずくめの男——千景が現れた。
「教員にも素性が知らされなかったので、てっきりそこらの貴族の跡取りかと」
 あの日、千景らアカデミーの教師には“水色のフードの生徒について、危険と判断したら強制送還”という指令が下っていた。
 国王は自嘲した笑いを浮かべた。
「親バカと思ってくれて構わない。
 娘を信じていないわけじゃあねえ。ただ、どうしても心配しちまうもんなのさ」
 それについての明言を避け、千景は頭を下げて言った。
「まさか、姫が影武者だったとは驚きました。このことを知っているのは?」
「アクアブレイドと今回の、ユー達4人、そしてミス・乳母だけだ」
「……王族は?」
「ノー。知ってた古株はみんな亡くなった。今の騎士団長すらも知らないことだ」
 千景は目を見開き、内心舌打ちをした。
 とんでもない情報を寄越してくれたな、と。

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